いくつの世界

 床が……冷たい……。
 目が覚めると、知らない光景が広がっていた。
 着ているのはいつもの青色のパジャマ。
 そばにはお気に入りのクジラのぬいぐるみ。
 でも場所だけが違う。
 ここは私の部屋じゃない。
 周りには扉がたくさんあって、部屋全体は丸くなっている。
 なんだか、寂しい、心細い場所……そんな感じがする。
 私はどの扉から来たのかな?
 ひとつの扉を見てみると、猫のシルエットが描いてある。
 隣の扉には、タマゴのシルエット。
 そうだ、この子と同じ、クジラのシルエットが描いてある扉を開けよう。
 そう思って、つぎつぎと扉を見ていく。
 ……オオカミ、……人間、……時計、……あれ?最後の扉には何も描かれてない。
 結局クジラはなかった。残念。
 どれにしよう……オオカミよりは猫かな?
 タマゴはなんだか気味が悪い気がするし……何も描かれてないのも不安。
 時計もいいかも。人間はなんだかちょっと怖い。
 うん、時計の扉にしよう。
 そう決めて、時計のシルエットが描かれている扉を開ける。
 中に入ると、そこは少し薄暗い。
 扉は開けたら閉めないと。
 そう思って、ガチャリと扉を閉めたときに気づく。
 扉の内側には文章が書いてある。
 暗くて読みづらいけれど、顔を近づけて見ればなんとか読めそう。

『うれしいな。ウレしいな。
 今日はいくつ、あるのかな?
  たぶん四つ。四つだね?
 どっちも外で、どっちも中……
   よかっ

タネ。     』

 なんだろう、これ?子供の遊びかな?
 文章の意味はよくわからないけれど……、不思議と共感できる気がする。
 前を見ると、一本道がずっと続いてる。
 この道……どこに続いているのだろう?
 後ろの文字が少し気になるけれど、とりあえずそのまま進むことにする。
 それにしても、あれを書いた子は、何を思ってあんな文章を書――
 背筋がぞっとする。
 今までの扉の絵が次々と頭の中に浮かぶ。
 もし、もし別の扉を選んでいたら……
                
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